「東雲サン、可愛そうだろ。腰引けてるし」私を見た泉君が言う。



「お前のせいで、飼い主が犬に散歩されてるみたいになってるぞ?」


「え?あ、ごめん」ぱっ、と繋がれていた手が解ける。


「いえ‥‥‥」


「シノ、食堂行くんでしょ?」


「みんなで行こ!!」


「おれ、弁当なんだけど‥‥‥」戸惑い気味に、泉君が言う。



「大丈夫だよー、あたしもだからっ♪」

1人分にしては明らかに大きすぎるお弁当を持って、元気よく先に行ってしまう。






「はやくー!!席埋まっちゃうよー!!」

一瞬で廊下の端までたどり着いた麻美さんが、
階段のところから声をかけてくる。




「麻ちゃん、速いなー」


「そうですね‥‥‥」


「元気が有り余ってるんだよ。おれ無理。
見てるだけで疲れる‥‥‥」言いながら、横であくびをする泉君。


「そうなんですか?」


「や、だって考えてもみてよ。早朝から朝練しといてあの元気だよ?」夜だって遅くまで部活あんのにさ、と付け加える。


「いつも元気ですよね」




「だから、元気が有り余ってんのか、ただのバカなのか____」

泉君がそこまで言ったところで、
「いずみん、あたしの悪口言ってるでしょ!!」と廊下の向こう側からオレンジ色の声が聞こえる。

「やめてよねーっ!!」とは言うけど、色は変わってない。




「ほら、あーゆーとこがバカっぽいっつーか‥‥‥‥」

歩いて廊下の端までたどり着いたところで、
麻美さんが「なに??」と聞いてくる。



「ん?そんなに食べてると太るよねって話」

いたずらっぽく笑いながら、
泉君が彼女の持っているお弁当を指差す。


そんな話、してなかったような‥‥‥‥?





「そんなことありませーんっっ!!」

麻美さんがほっぺたを膨らませている様子を横目で見る。