「どしたの?忘れ物?」おれが来た方を見て言う。
「いや、教室の電気。点いてたから、消しただけ」
「まだ人残ってたんだ」
「や、知らんけど」
「ま、いっか」帰ろー!!と先陣をきる。
お前が先に行ったら、おれは知らん男(しかもよく見たら先輩だし)と2人になるの、分かってる?
気まずいんですけど。
____まぁ、中学のころに比べたら、随分成長したか。
「あれ?いずみんバスじゃないの?」おれのチャリを見て言う。
「智里が風邪引いて休んだから」いつもはバスだけど。今日は天気もいいし。
「そーなんだ」
「なに」
「んーん。なんでも」
つか、おれと話してたら彼氏(仮)がかわいそうだろ。
早く行ってやれよ。送ってくれるんだろ。
「んじゃ、またねーっ!!」
ぶんぶん、と手を振って。
おれとは反対側の道を曲がって行く、2人の背中を見送る。
なんだか少しだけ寂しくなったように感じて、慌ててペダルに体重を乗せる。
春の風が、優しく撫でていく。
____おれもそろそろ、変わらねーと。



