「________ありがとう」



そう、涙声が聞こえた。

ここからはよく見えないけど、サクの身体に埋もれているのはお嬢だと思う。

あそこまで身長が低いのは、彼女しかいない。




よかった、とほっとして。

ここに来てようやく、自分がものすごく心配していたことに気が付いた。

この性格も、ここまで来ると厄介だな、なんて思う。





部活のミーティングで遅れて、帰るときにサクが見えたからここに来たんだけど。

途中で笑菜と話していたはずなのに、いつの間にかどこかに行っちまった。

あいつも部活のリーダー会議と、今日の体育祭の反省会なるものをしていたらしい。

まだ校舎にはいると思うけど、この状態を見られたらマズいことは分かる。



「ずるい」とか言って、やきもち焼いた勢いで変な男に引っかかりそうだしな。

おれもここに長居する気はないし、なにより今は、2人きりにさせてやった方がいい。






____全部、話したんだろうと。

なんとなく思った。




サクが転校してきてからすぐに一緒にいたけど。

やっぱりどこか、他人にたいして遠慮というか、隠しているような部分があるんじゃないかって。


それで、苦しんでるんじゃないかって。