みつあみにしていた髪を解いて。
櫛を持っていて。
眼鏡は、外していて。
なんだか、別人のようで。
____でも、声は。確かに、シノだ。
「あの、なにか‥‥‥‥?」
「あ、や、ごめん」
ぼーっと見ていたことに気がついて、少し恥ずかしくなった。
「なんか、いつもと違うから、ビックリして」
「あ、‥‥‥‥」
「シノ、癖っ毛なの?」
それっぽい話題を振っておく。
大丈夫。いつも通り。
「みつあみにしていたら、癖がついてしまって」と教えてくれる。
それにしても、こんなきれいなウェーブになるだろうか。
彼女のことだから、嘘はついていないと思うけど。
少し伏せられた、長い睫毛。
髪が夕焼けの光に染まって、透き通って見えた。



