____扉を開けた先には、少しウェーブのかかった、長い髪の女の子が座っていて。
窓から夕焼けの光が差し込んで。
薄暗い教室の中。
こちらを向いた瞬間、彼女の髪がふわ、と動いて。
逆光になっていて、顔はよく分からなかったけど。
その瞳がしっかりと、俺に向いているのを感じた。
まるで幻想的ななにかを、見たような気分になって。
しばらく、動けないでいた。
「‥‥‥‥あの?」
「あ、ごめん」さすがに入り口に突っ立ったままじゃ、怪しまれる。
「え、と‥‥‥‥‥。シノ、だよね‥‥‥‥‥‥?」
「‥‥‥‥?はい」
違ったら、教室を間違えたことにしてしまおうと考えて、その返事にほっとする。
いつも通り。なるべく、いつも通り。
なんともないように、しないと。
いつもと同じように、彼女の前の席の椅子に座って、向かい合う。



