「さっき取れかけてたから直したんだよ。似合ってなかったし」
「こっちのがいいかもね」とサクも同意してくる。
彼のスプレーのミントみたいな匂いが、柑橘系と相まって鼻の奥がスースーしてくる。
かなり暑そうにしているくせに、スプレーが終わるとそそくさとジャージを着てしまう。
雪国だし、もしかしたらこっちの気温は、東京人には寒いのかもしれない。
袖なんか掌まで届いている。
おれなんかは暑がりだから、見てるだけで汗出てきそうだけど。
「えー、2人ともずるくない?」
「ずるくない」だって似合ってなかったし。
「えー!!じゃ、あたしもあれにする!!」
「「いいよ、そのままで」」
「なんで!!」
「髪が長くないと無理だよ?」サクが言うと、観念したのか、口を尖らせながら水筒に口をつけた。
ぴぃ、と笛が鳴いて、吊し上げられたパンに飛びかかっていく。
あ、ウサギにしとくんだったな、と思った。
失敗した。
______でもあれはあれでいいか。



