「んな大層なこと、してねーけど」
「笑菜ちゃんにとっては、大層なことですよ」
「___だと、いいけど」薄桜色が、ふわ、と滲んで。
「よかったんですか、私で」
黄色のハチマキをつけた子が、すごい速さで他の選手を追い越していく。
今年は黄色が優勢みたいだ。
声援が大きくなる。
「あいつが話したんだから、もう別に隠すことねーよ」
「桜庭君には、話さないんですか」
「サクはなんか、いいや」なんかあるっぽいし、と付け加える。
「そうですか」泉君は、鋭いなと思う。
「笑菜には、自分のために色々してほしいと思うんだよな」
ふと、隣で彼が言う。
「自分のため‥‥‥‥?」
「ずっと、他人のためだったから」
そういえば。
趣味がない、みたいなこと言ってたな。



