「‥‥‥‥なぁ」
話しかけて、やべ、と思う。
勉強してるんだった。
「‥‥‥‥なに?」
3秒くらい経ってから、返事が帰ってくる。
「話しかけていいか‥‥‥?」
「もう話てんじゃん‥‥‥」なに、ともう1度聞いてくる。
それもそうか。
「‥‥‥どっちなんだよ。本当のお前は」
「‥‥‥え?」一瞬、驚いたように顔を上げる。
「普段の笑顔安売りしてんのか、今みたいに無表情なのか」
「‥‥‥さぁ」どっちだろ。とまた視線を落とした。
______しばらく、また紙の音だけがうるさくなる。
トントン、と資料を揃えていると。
「‥‥‥どっちでもないよ」と、返ってきた。
「どっちでもないって」
「うん。多分、どっちでもない」



