ブレザーのボタンを閉めて、リボンをぱちんと付ける。


薄鈍色(うすにびいろ)が見えたら、準備完了だ。


持っていくものは教科書と一緒にリビングに置きっぱなしにしているから、他にはなにもしなくて済む。





____と。危ない危ない。


これを忘れるところだった。




棚の上から愛用のヘッドフォンを首にかけて、リビングへと向かう。


とんとん、と階段を踏むたびに、薄紅色(うすべにいろ)が視界ににじむ。








「おはよー」



私がリビングに入ると、お母さんが若草色(わかくさいろ)の声で「おはよう」と返してくる。


この色は、やさしくて好き。




「目玉焼きとベーコンなんだけど。ご飯とパン、どっちがいい?」


「パンで」




丼鼠色(どぶねずみいろ)の声が、テレビから聞こえてくる。


1週間前くらいに起きた、殺人事件の内容が流れている。


この色は、汚くて嫌い。