「今年は来るといいね、新入生」言いながら、先生がキャンバスに色を落としていく。


「そうですね‥‥‥‥」



油絵の具の匂いのする部室は、今日も閑古鳥が鳴いていた。


____見学3日目。誰も来る気配がない。

部員が少ないせいで呼び込みもできず、廊下の「新入部員歓迎」の張り紙が悲しそうに、パサパサと空色の声で鳴く。



予想通り、部活紹介で大々的なパフォーマンスのあった運動部や吹奏楽部に人が流れていた。

「俺、前でボール蹴ってただけだよ」と桜庭君は言っていたけど、歓声が凄かった。

中には出入り口で待つ子もいたけど、彼は終わった後そのまま教室にいたせいで、不発に終わっていた。



笑菜ちゃんは「派閥が出来そう」って言ってたけど、桜庭君のところに流れているのか、こっちにはあまり人が来ない。

今頃、サッカー部の使ってる体育館は、色とりどりの歓声で溢れているんだろうな。





「すみませーん」

ドアノブが回されて、1年生の女の子が何人か入ってくる。リボンが青いから、すぐに分かった。



「こ、こんにちは!!」見学ですか?と聞いたところで、先生目当てかな、と思う。

何人か部室に来てはいたけど、みんな部活じゃなくて先生目当てだった。

お陰で、部室のドアに「先生不在」と張り紙を付けるハメになってしまったんだけど、それでもポツポツと女の子が来ては帰ってを繰り返していた。