「終わったー!!」
疲れた~、と私の斜め横で机に突っ伏している。
「これから帰るんだから使い果たすなよー」と泉君に起こされている。
「お疲れさまです」
「んー」もう起き上がるのも面倒なのか、ちょっと手を上げて、また力尽きてしまった。
「久しぶりに本気だよなぁ」なんて隣でぼやいている。
さっきから数秒しか経ってないのに寝息をたて始めた彼女にため息をついて、泉君が自分のジャケットを掛ける。
「世話のやけるヤツだな」と表情に書いてある。
だけどその瞳がどことなく暖かいのは、彼女との付き合いが長いからかもしれない。
「ごめんな、いろいろ付き合わせて」
「ううん、全然」
「大丈夫ですよ。私も、勉強になりました」
「あんなに分からんヤツ初めてだろ」なんて笑う。
数学が分からなくて教えていたけど、彼女の変な固定概念が抜けなくて苦労した。
分かったときにはこれでもかってくらいにきらきらした瞳を向けてきて、上手く直視出来なかった。
「私も、分からないところが、分かったので‥‥‥」
勉強を教えるのも勉強になるんだなぁ、と思った。
今までずっと1人でやってきたから、分からなかったけど。



