「‥‥‥‥え、普通にすげーと思うけど。それがなんか、問題なの?」


「すごい、ですか?」


「カラフルで、楽しそうだなって」


「‥‥‥‥‥‥‥‥そうですか」


「それって。シノがってこと?」


「もしもって、言ったじゃないですか‥‥‥これ以上は聞かないでくださいね。友達の、話です」


「なんだ。友達か」


「‥‥‥‥え」




「シノだったら、もうちょっと色々、聞きたかったんだけど」


そう言って、いじわるな笑顔を向けてくる。




「‥‥‥‥え」


「だって、あんまりシノと話す機会ないじゃん。体育とか別だし。すぐ席替えしちゃったから、離れたしさー」



桜庭君の席は、今は教室のまんなかあたり。

席だけじゃなくて、桜庭君もクラスのまんなかにいるけれど。



「桜庭君は、私と話したかったんですか‥‥‥‥?」


「話したかったっつーか。クラスでよく知らないの、シノくらいだし」




桜庭君、人気だからな。

もともと私が話していい部類の人じゃないことくらい、分かってたけど。

私なんか、きっと眼中にもないんだろう。

彼の友達になる人は、たぶん、もっときらきらして、もっとふさわしい人で。


長く、みつあみになった髪が視界に入る。

こんな教室の隅の、冴えないみつあみメガネなんかじゃ、ないんだろうな。