「ん。あたしの家、もうみんなバラバラ」

昔はあんなことなかったんだけど、と少し悲しそうに言う。



「うち、パパいないんだー」


「離婚‥‥‥ですか?」


「んーん。そーゆー訳じゃないんだけどさ。‥‥‥‥なんだろ。実質、別居状態?みたいな。
ママが成績いいことに固執するようになってから、帰って来なくなっちゃった」

離婚したとは聞いてないから、
まだ一応、夫婦ではいるみたいだけどさ、と付け加える。




「____てか、ママもママだよ。それをいいことに、不倫してるしねー」


「‥‥‥‥えっ!?」不倫なんて。ドラマみたいな‥‥‥‥。


「しかも、弟の家庭教師だよ?」笑っちゃうよねー、とオレンジ色が濃く浮かぶ。


「‥‥‥‥え、家庭教師の先生が来るって」


「そーゆーこと」暗闇の中、少しだけ悲しそうに笑ったのが見えた。




「頭いい弟しか可愛くないみたいだし、あの家にあたしの居場所なんてないもん」

周りの目気にして、あんなとこにでっかい家建てちゃうしさ‥‥‥とひとりごちる。




「あーあ。あたし、この家の子になりたかったなぁ‥‥‥‥」