「これ、いいね」
彼が見せてきたのは、夕焼け。
大半が青空なんだけど、水平線に向かって色が変わっている。
「シノのおすすめって、写真集ばっかりだったけど、なんで?」
「写真集だけじゃ、だめでした?」
「なんか、珍しいなと思って」
「きれいな景色が、好きなので‥‥‥」
他にも、海と森の写真集をおすすめとして飾っている。
なんとなく、これを通して色の世界を共有したいと思っているのかもしれない。
「この、写真撮った人。すごいよね」
「‥‥‥?」
「だってこんなすげー景色をさ、1人占めしてるんだよ。うらやましいって思うじゃん」
「そうですね」
「こんなの目の前で見れたら、すげーよな。‥‥‥‥そういや、シノにずっと聞きたいことあったんだけど」
「は、はいっ‥‥‥‥!!」まさか私に話題が移るなんて思っていなくて、緊張が走る。
「いつもヘッドフォンしてるけど、なんの音楽聴いてんの?」
「え‥‥‥‥」
「Bluetoothでしょ、それ」
それについては、間違っていないのだけど。
「よく、聞かれます」
「違うの?」
「‥‥‥聴きますか?」
「いいの?」
「ここなら、大丈夫です。減るものでもないので」