「大丈夫ですかっ‥‥‥‥‥‥!?」




階段を降りてすぐ左側。

へたりこんでいる彼女に声を掛ける。



その隣には、割れたガラスの処理をしているお手伝いさん。

彼女の前に立つ、スーツの女の人。





「____なに?コレ」



"コレ"が何を指すのかは分からないけれど。

発せられたその言葉が、ものすごく刺々(とげとげ)しくて。


その言葉が、目の前の彼女に向かっているのが分かる。

なんでこんなに、汚い色なんだろう。




「勝手なことしないで」


「勝手はそっちでしょ。もうすぐ家庭教師の先生が来るの。早く出てってよ」友達呼ぶとか聞いてないんだけど、と(まく)し立てる。


イガイガする。





「うっさいなぁ‥‥‥‥‥‥」

はぁ、と重い溜息に混ざる、濃いオレンジ色。



カチャカチャ、と割れたカップの音と、夏虫色がまた視界に浮かんだ。