〈あ、ごめん!!忘れてたー!!〉
インターホンを通してそんな声が聞こえたかと思うと、玄関の扉が開いて彼女が飛び出してくる。
「鍵開けらんなかったんだけど」
「なんか、最近あの人達が電動にしようとか言い出してさぁ‥‥‥‥」超不便だよねぇ、と難しそうな顔で鍵を差したり抜いたりしている。
「手動でいいのにさー」はい、できたっ♪と門を開けてくれる。
「今日はみんな出払ってるから、宿題日和だよ!!」
「まさか、終わらないから泊まれとか言わないよな」
「言わない言わない!!」
「本当かー?」
「____こんにちは」玄関に入ると、お婆さんがお出迎えしてくれた。
紅梅色の、心地のいい声だ。
「あっ、こちら、お手伝いの鈴木さん」
「おっ‥‥‥‥‥‥」
「お手伝いさん、‥‥‥‥‥‥‥‥」
驚きすぎて言葉が出てこなかった。
隣を見ると、桜庭君も固まっている。
知らなかった。まさか、こんな家庭だったなんて。
持ってきたお菓子が貧乏に思えてくる。