「まじ?」


 「はい‥‥‥‥‥‥‥‥」


 「うわー。めっちゃ不便」そう言いながら、近くにあった読書スペースに腰を下ろす。


 「えっと‥‥‥‥‥‥‥‥」


 「待つんでしょ、ここで」


「はい‥‥‥‥」


「シノのおすすめの本、ある?」




鞄を机の上に置いて、入り口付近の図書委員の掲示板の前に移動する。




「これです。私の、ブース」


私が指差すと、3冊の中から夕焼け色の本を手にとって、読書スペースへ戻る。












「あの」本を開く彼に、声をかける。


「なに」


私の声は小さいとよく言われるのに、彼はちゃんと拾ってくれる。




それは今日に限ったことじゃなくて、最初から。      


「え、なに?」って聞き返されてしまうと、どうしても先に進めなくて嫌になってしまうのだけど。


彼といると、そんなことはなかった。  







「どうして、私と‥‥‥?」


だから私も、安心して言葉を続けることができる。