「____ありがとうございました」
バス停の前のつもりだったけど、
結局家の前まで送ってもらってしまった。
ちょっと申し訳なくなる。
「いいのよ、これからも彩葉のこと、よろしくね」
「ご挨拶したいわ」と言われたけど、婆ちゃんは出掛けてるみたいだった。
今日は爺ちゃんも、囲碁でいないし。
「すみません、なにもできなくて‥‥‥‥」
「いいのよ、もうたくさんしてもらったから」
「え‥‥‥‥?」
「彩葉と仲良くしてくれて、気にかけてくれるだけでうれしいのよ。
あの子、今までクラスの子のこと話したことなくて。
桜庭君のこと、すごく楽しそうに話すのよ。それだけで充分」
「これからもよろしくね」最後にそう言って。
にこ、と笑って、シノのお母さんが車に戻っていく。
「あの‥‥‥‥!!また、学校で‥‥‥‥!!」
ためらいがちに窓から響いてきた声に、手を振り返す。