「ありがとうございます」


「いいえー!!」




「すみません、強引に‥‥‥‥‥」


「こっちこそ、なんか強引に押し掛けちゃって」


「いえ、そんな‥‥‥‥‥」



後部座席で2人してペコペコお辞儀をしていて、
なんだか変なことしてるみたいに思えてくる。





「桜庭君、お家はこの辺り?」


「はい。氷町の、バス停前辺りまでで結構ですよ」


「いいわよ、お家の前までで」


「道が狭いので、車が通れるかどうか‥‥‥‥」



そういえば、桜庭君をこんなに近くで見たのは、久しぶりな気がする。




「‥‥‥‥‥‥ん?」


「‥‥‥‥‥?」


「なに?」


「‥‥‥‥‥‥いえ」なんでもないです、と前に向き直る。



この距離でいるのも、勘違いしちゃいそうで‥‥‥‥‥‥。

変にどきどきしてしまうのを、あまり自覚したくない。





「あの」


「ん?」