初日に部活を聞いてきたくせに、サッカー部に入ってしまった。    


ちょっと話せる人ができて嬉しかったのに、ざんねん。


部活中も色とりどりの声援が、4階からでも分かるんだから。すごいと思う。


転校して1日目でほとんどの人と話してたし、クラスの輪に溶け込むのも速かった。





____すごいな。私とは、別のセカイの人だ。


きらきらして。やさしくて。


本当に、別のセカイの人だと思った。


いつも必ずと言っていいほど、2、3人は女の子が机を囲んでいるし。


みんなにやさしい。






いろんな色の中ににじむ、卯の花色。


桜庭君の声は、とてもきれい。




それを見ているだけで、
なんだかいいことがあった日みたいに、ふわふわした気持ちになる。


――――なんて。恥ずかしくて言えないけど。

















____そんな桜庭君との距離が縮まったのは、ある放課後のことだった。



その日は図書委員の仕事で、遅くまで教室に残っていた私。

学級文庫の入れ換えをしていた。




「あれ、シノだ」()花色(はないろ)が、視界に浮かぶ。


「桜庭、君‥‥‥‥‥‥‥‥」




名字しか教えていなかったからか、彼の中で私は「シノ」と呼ばれることに落ち着いたみたいだけど。


部活に勤しんでいるはずの彼が、なぜここにいるのだろうか。




「どうしたの? こんな時間に」


「あー、いや。忘れ物して」


「忘れ物‥‥‥?」私が言い終わらないうちに、教室に入って机の中をまさぐり始める。


「あー、あったあった」






「これこれ」と机の中からボールペンを出す。


ちょっと高級そうなデザイン。

東京の高校生って、こんなにお高そうなもの持ってるのかな。