「えっと、あの‥‥‥‥東雲さん、だっけ」


「はっっ、はゎい‥‥‥‥っっ!!」

掴みかけたうどんがお箸の間からすり抜けて、黄金色の汁の中へ戻っていく。




「お願いがあるんだけどさ」


「な、なな‥‥‥‥」なんでしょうか。


「学校の中、案内してくれない‥‥‥‥?」


「へ‥‥‥‥?」


「ほら、俺まだ東雲さんしか知り合いいないし‥‥‥‥担任の先生も、東雲さんにって」


「え‥‥‥私が、ですかっ!?」


「あれ‥‥‥?もしかして、知らなかった?」



なんでこんな人見知りに転校生の案内なんか‥‥‥と思いながら、その不思議そうな瞳を見つめ返す。

とはいえ、ここで私が断っちゃったらだめだ。




「案内とか、下手、ですけど‥‥‥‥それでもいいなら」

なかば強制的に引き受けた案内役は、人見知りのせいでほとんど話すことなく終了して。






____あれから、2週間がたった。


私たちの距離は最初と同じ、隣の席の人。

クラスの空気に戻った私とは逆に、桜庭くんの人気は増すばかりで。

隣の席というだけで、もっと距離ができてしまったように思う。