____あの頃のわたしはただ、周りに合わせることに必死だった。


ちょっとでも遅れたり、違うことをしたりするとすぐ仲間外れにされるから。


とにかく必死だった。浮いてはいけないと思っていた。


でも、そう考えて行動するほど周りから人が離れていく気がして。ものすごく不安で。




同時に、星川君のことが羨ましかった。


自分をさらけ出していて、人に合わせなくても人気者で。






あんな風になりたいな、と思ったんだ。













____月城 海音さんへ。




不器用なその文字を見て、思わず吹き出してしまう。


そういえば星川君、字が下手だったっけ。懐かしい。










____5年生のバスケの授業のとき、いっしょに話したのおぼえてますか。




たぶん、初めて話した時ときのことかな。


それまでは別世界の人だったから、特に話そうとも思わなかったんだけど。






バスケがしたくなくて仮病を使ったわたしの横に、星川君が座ってた。


休めたことにほっとしているわたしと違って、彼は動きたそうにバスケットボールを手に持っている。


ときどき器用に指先でボールを回している彼を見ていたら、いきなり話しかけてきたんだ。




「海音、なんで休んだの?」って。




クラスの人気者に話しかけられるなんて夢にも思わなかった私にとって、それはかなり衝撃的で。




「いーでしょ、別に」仮病なんて言えなかった。


「俺は骨折!!見てこれ。ぽっきり折れてるって、先生に言われた」


「そーなんだ‥‥‥」




ふふん、と包帯に巻かれた腕を自慢げに見せてくるけど、わたしにはどうでもよかった。