「開けるぞー‼︎」
そのうち、星川君の掛け声でタイムカプセルが開けられる。
いつの間にリーダーへと転身したらしい。
そういえばこういう人だったな、と少し笑みがこぼれる。
6年前に埋めたものが、次々と大きなお菓子の缶から出されていく。
すし詰め状態になる中、わたしは誰にも見られまいと、フタを開けたのとほぼ同時にそれを取り出した。
みんなが自分のものを探している間、人の群れから離れてほっと息をつく。
____わたしが埋めたのは、手紙だ。
色とりどりの水玉が描かれた封筒の裏には、
『星川 昴《すばる》くんへ』と6年前の私の文字で書かれていた。
相当緊張していたのだろう。『へ』の文字が、封筒からはみ出しそうになっている。
手紙を埋めたのはわたしだけじゃないけど、中身は公開できない。
その内容が自分以外に宛てたものだったなんて知れたら、大騒ぎになるだろうから。
「ひゃぁっ⁉︎」
「あ、ごめん。いきなり……」
突然肩に手を置かれて、思わず飛び跳ねてしまった。
振り向くと、黒髪ストレートの「王子様」が目の前に立っていた。
「王子様」は言い過ぎかもだけど、白のブレザーに水色のネクタイ。
ブレザーの下のベストとズボンはグレーという出立は、わたしには結婚式の新郎にしか見えない。
わたしにとって彼は6年前から「王子様」だから、あながち間違いではないけど。
「海音……だよね。久しぶり」
へらっと笑った顔が、記憶と同じで。
でも、あのときとはまるで違う、男性的な声。
喉仏がこれでもかってくらいに出ているのが、目の前にいても分かる。
同じようで違う彼に、心の中に閉まってあった熱がこみ上げてきた。
いつの間にか、心臓がとくとくと波打っているのが聞こえてくる。
「う、うん……」
ほんとに、昴君だ。
懐かしくなったせいか、心の中で名前呼びになっている。
あのときは名前でなんて呼べなかったけど、たしか手紙には『昴君』と書いていたはずだ。