「あの、さ‥‥‥」
自分の心臓の音だけだった耳に、彼の声が聞こえる。
「な、なに‥‥‥?」
緊張してるのが、彼の声からも伝わってくる。
同じくらいだった身長も、いつの間にか高くなって。
声だって、わたしの記憶よりも低くなって。
そのことが、手紙の『大人になったら』に重なる。緊張でどうにかなりそう。
「俺、ずっと海音のこと好きだったんだ。‥‥‥今も、変わらないから」
優しい瞳。あの頃と同じ笑顔に、息が止まりそうになる。
「わたし、も____っ」
好き、と言おうとしたけど、無意識にこぼれていた涙のせいで嗚咽に代わってしまった。
にじんだ視界に、満開の桜と、昴君の優しい表情が映った。
いつの間にか周りに人だかりができていたのは、また別の話。