◆ ◆ ◆
「俺のせいでお前が不良共に目つけられてんだよ。襲われるかもしれない。だから、もう俺とは関わるな、分かるだろ?」
同じことを言うのは3回目だった。
わざわざバイトを休んで、千早を最寄りの駅前に呼び出して、そこらへんのベンチに座って、もう3回も同じことを正直に説明してる。
夜になるともうイルミネーションが光りはじめる季節だ。
千早を早く帰したい。
それなのに
「やだ……」
説明を繰り返す度にみるみる表情が曇って、千早はいまにも泣きそうだ。
「なあ、分かってくれ」
俺だって本意じゃない。
千早と一緒にいることは、楽しかったし、嫌な気はまったくしなかった。
だから、千早が俺のせいで傷付くのは許せない。
「俺、帰るからな」
このままでは埒があかない。
仕方なく、俺からベンチを立った。
「やだ、やだよ、龍生……っ、りゅうせい……っ!」
両手が空を切って、ついに千早は泣き出してしまった。
泣かせて楽しいわけがない。
「……っ」
心を鬼にして、そのまま数歩進む。
雛を巣から落とす親鳥の気分だった。
「うぁああぁあ、りゅうせいぃぃ……っ」
千早はぜんぜん違う方向に駆け出して転んだ。
その泣き声が辺りに響き渡る。
顔は涙でぐしゃぐしゃだし、周りの人間は怪しんで近付いていかない。
――ああ、無理だ……!
「千早……!」
こんな状態で置いていけるはずもなく、思わず、戻って駆け寄ってしまった。
「うぅ、りゅ、せい……っ」
「ごめんな」
腕に縋り付かれて、謝らずにはいられなかった。
俺との関係を切ること。
これが最善だと思ったんだが、千早にとってはそうじゃないのか?
「一緒にいてよぅ……」
ぎゅっと首に両腕を回されて、分からなくなる。
「どうしたらいい」
そうつぶやいたのは半ば無意識だった。
解決法が欲しかった。
耳元でぐずぐず言ってるのが聞こえる。
でも、不思議とさっきよりも千早は落ち着いていた。
「……攫われたお姫様はね、ぐすっ……王子様が助けに来てくれるの」
さらに落ち着かせるために背中をとんとんと軽く叩くと、そんなことを言った。
また幻想みたいなこと言いやがって。
とりあえず、保留だな。
できるだけ一緒に居てやるしかない。
「帰るぞ」
「一緒がいい……」
言葉だけ先に言うと、千早はぎゅっと腕に力を込めて俺を離さなかった。
「一緒に帰んだよ」
はなからそのつもりで、正面から千早を抱き上げる。
つーか、最初からお前は俺を一人で帰す気ねぇだろ?
「お姫様抱っこ」
「お子さまにはしない」
「えー、僕たち同い年なのに」
「赤ん坊の間違いだろ」
俺がそう言うと、千早はやっと笑ってくれた。
ほんと赤ちゃんみてぇなやつ。
「龍生、ずっと一緒にいてね……」
すっかり大人しくなった千早が俺をぎゅっと抱きしめるように言う。
「無茶言うな」
そう言いながらも強く抱きしめ返してやった。
「俺のせいでお前が不良共に目つけられてんだよ。襲われるかもしれない。だから、もう俺とは関わるな、分かるだろ?」
同じことを言うのは3回目だった。
わざわざバイトを休んで、千早を最寄りの駅前に呼び出して、そこらへんのベンチに座って、もう3回も同じことを正直に説明してる。
夜になるともうイルミネーションが光りはじめる季節だ。
千早を早く帰したい。
それなのに
「やだ……」
説明を繰り返す度にみるみる表情が曇って、千早はいまにも泣きそうだ。
「なあ、分かってくれ」
俺だって本意じゃない。
千早と一緒にいることは、楽しかったし、嫌な気はまったくしなかった。
だから、千早が俺のせいで傷付くのは許せない。
「俺、帰るからな」
このままでは埒があかない。
仕方なく、俺からベンチを立った。
「やだ、やだよ、龍生……っ、りゅうせい……っ!」
両手が空を切って、ついに千早は泣き出してしまった。
泣かせて楽しいわけがない。
「……っ」
心を鬼にして、そのまま数歩進む。
雛を巣から落とす親鳥の気分だった。
「うぁああぁあ、りゅうせいぃぃ……っ」
千早はぜんぜん違う方向に駆け出して転んだ。
その泣き声が辺りに響き渡る。
顔は涙でぐしゃぐしゃだし、周りの人間は怪しんで近付いていかない。
――ああ、無理だ……!
「千早……!」
こんな状態で置いていけるはずもなく、思わず、戻って駆け寄ってしまった。
「うぅ、りゅ、せい……っ」
「ごめんな」
腕に縋り付かれて、謝らずにはいられなかった。
俺との関係を切ること。
これが最善だと思ったんだが、千早にとってはそうじゃないのか?
「一緒にいてよぅ……」
ぎゅっと首に両腕を回されて、分からなくなる。
「どうしたらいい」
そうつぶやいたのは半ば無意識だった。
解決法が欲しかった。
耳元でぐずぐず言ってるのが聞こえる。
でも、不思議とさっきよりも千早は落ち着いていた。
「……攫われたお姫様はね、ぐすっ……王子様が助けに来てくれるの」
さらに落ち着かせるために背中をとんとんと軽く叩くと、そんなことを言った。
また幻想みたいなこと言いやがって。
とりあえず、保留だな。
できるだけ一緒に居てやるしかない。
「帰るぞ」
「一緒がいい……」
言葉だけ先に言うと、千早はぎゅっと腕に力を込めて俺を離さなかった。
「一緒に帰んだよ」
はなからそのつもりで、正面から千早を抱き上げる。
つーか、最初からお前は俺を一人で帰す気ねぇだろ?
「お姫様抱っこ」
「お子さまにはしない」
「えー、僕たち同い年なのに」
「赤ん坊の間違いだろ」
俺がそう言うと、千早はやっと笑ってくれた。
ほんと赤ちゃんみてぇなやつ。
「龍生、ずっと一緒にいてね……」
すっかり大人しくなった千早が俺をぎゅっと抱きしめるように言う。
「無茶言うな」
そう言いながらも強く抱きしめ返してやった。