「そのケーキ、食べてみたい」

 自分はフルーツがたくさん乗った季節のショートケーキとかいうやつを食いながら、突然、俺のブルーベリーチーズケーキも食いたいとか言い始めやがった。

「注文すればいいだろ?」

 自分で注文して食べればいいだろ、どうして人のものをほしがるのか。

「ちょっと味見だけしたい。ダメ?」

 正面で小首を傾げられて、断れなくなる。

「はぁ……」

 俺はまた溜息を吐いて、席を立った。

「え、帰るの?」

 驚いたように見えにくい目で俺の影を追う千早。

「違う」

 自分のケーキ皿を持って、俺は千早の隣の席に腰をおろした。
 ちょうど空いてる時間帯で四人席に案内されてよかったな、千早。

「ほら、口開けろ」

 フォークに一欠片刺して、口元まで持っていくと、千早は親鳥から餌をもらう雛のように口を開けた。

「んー、美味しい!」

 口にケーキを入れて数秒後、大げさなくらいに千早は喜んで、幸せそうな笑みを浮かべた。

 ――なんだ、この小動物。