「好きだ、遥」

あぁ、言ってしまった……

なんというか…全身が熱い。

消えてしまいたいくらい、恥ずかしい。

俺はそんな気持ちをグッと堪え、
遥を見つめ続けた。
ちゃんと、俺の想いを伝えなくちゃダメなんだ。

……
……

沈黙が続いた。

永遠のような一瞬のような、そんな沈黙だった。

「……ひーくん」

遥の声は震えていて、普段とは明らかに違うものだった。
きっと、今、俺と同じくらい緊張しているのだろう。

「僕も好き…だよ。
知ってると思うけど……」

その言葉を聞いた瞬間、俺は自分の中にあった遠慮や躊躇みたいなものが音を立てて崩れていくのを感じて、

「俺っ、遥のことずっと好きだったんだ!
本当に小さい頃から…だから高校生になって再会して男だって知った時はすげぇ驚いた。
俺が好きなのは昔の遥なんじゃないかって
思ったりもした!
……でも!
一緒にいて分かったんだ。
俺は昔の遥だけじゃなく、
今の遥も好きだってことを!
性別なんかどうでもいい、
俺は「門脇遥」っていう人間がっ、
どうしようもないくらい好きなんだよ‼︎」

気付けば、
俺は自分でも信じられないくらい
感情を露わにして饒舌になっていた。
最後の方はもはや叫んでいた。

「はぁはぁ……」

俺は両膝に手をつき、前傾姿勢で、
ゆっくりと息を吐き出した。

「大丈夫?」

その様子を見た遥は、一歩前に出て俺に近づくと、俺の肩にポンと手を置いた。

「あぁ…ありがとう。多分…大丈夫だ…」

「いや、絶対大丈夫じゃない」

「流石幼馴染」

俺はそう言いながら、よろよろとした足取りで自分のベッドへ向かうと、そこに腰を下ろした。

「ちなみにこれってさ」

「何だ?」

「付き合ってくださいっていう告白だよね?」

「えーと…」

勢いに任せて告白しただけなんて言えねぇ‼︎
だから、さっきのはとりあえず自分の気持ちを伝えたかっただけだ。

…いや、待てよ?

俺は体育祭で小泉さんが遥を好きだと知った時、嫉妬していたよな。

あの時、俺が嫉妬したのは、
遥が小泉さんの彼氏になってしまうのが
嫌だったからだ。

このことは遥に好意を向けているのが、
小泉さんでなくとも、成立するはずだ。

という事は…

俺は遥を誰にも取られたく無いと思っているということになる。

この感情と付き合いたいという感情は果たしてイコールなのか?

……分からん‼︎

考えるのはやめにしよう。

だって、


その答えはきっと、
 

君の笑顔を見れば分かるはずだから。