「なんて言うかその…
思ってたより、汚いね…」

勉強会当日。
俺の部屋に足を踏み入れた遥の第一声がそれだった。

「これでも、綺麗にしたんだけどな…」
「いや、そんな風には見えないよ」

まあ、確かにベッドの上には、雑誌が乱雑に置いてあるし、机の上はシャーペンとボールペンだらけだし…
綺麗にした、と言っても実際は掃除機をかけるくらいしかしていない。

「まあ僕は男だから、良いけどさ。
もし、ここに女の子が来たら、マジで引かれるよ?」

遥が眉をひそめ、こちらを見た。

「いや、まず無いだろ。俺の家に女子が来るなんて」
「何でそう言い切れるの?」
「だって…」

はぁー、これ、言わないとダメなのか⁉︎

「その……
俺、遥以外に興味ねぇし」

羞恥からなのか、消え入るような声になってしまった。

「え、それって!僕のこと好きってことだよね?」

さては…こいつ、カマをかけやがったな……⁉︎
卑怯者ぉ……‼︎

「いや、違う‼︎違ぇから‼︎」

何言ってんだ、俺。
俺はいつも、そうやって誤魔化して逃げようとする。
自分の気持ちがはっきりするまでは、遥に告白なんかしないって決めてた。
でも。
でも…‼︎
俺は胸に手を当てた。
鼓動は今まで感じたことのないほどの早さだ。 
これが何よりの証拠だろう。

俺は覚悟を決め、体を遥の方へ向けると
その瞳をじっと見つめた。
無言ではあるが、表情の微妙な変化から、
俺の突然の行動に対する遥の戸惑いが、伝わってきた。

俺は大きく息を吸った。
そして、



「好きだ、遥」



その瞬間、
世界が少し変わったような気がした。