更衣室には、俺以外誰も居ないようだった。
不気味なほどの静寂が辺り一帯を包み込んでいる。

ーゴトッ。

…ん?
いま、背後で音がしたような?
気のせいか。

ーガタガタッ。

やっぱ、音聞こえんだけどぉ‼︎

ーバァン‼︎

そんな音と共に、俺の真横のロッカーが開いた。


その中から飛び出してきたのは……

「やっほ〜、僕だよぉ。あなたの永遠の幼馴染こと遥だよ〜」


「遥⁉︎
いつから、いたんだよ⁉︎
あと、何だその昭和のアイドルのキャッチコピーみたいなのは。」

「えへへ〜、いつからいたかは内緒♡」

「えへへ〜……じゃねぇよ!つーか、そもそも何でロッカー入ってたんだよ?」
「だって、この時間って?まだお昼ご飯食べてる人がほとんどで?更衣室はほとんど人居ないないから?だから、もしひーくんが早めにここに来てくれたら、ひーくんと二人きりになれるかなぁなんて期待しちゃって…」

「普通に怖ェんだけど‼︎遥ってそんなヤバい奴だったのか⁉︎」

「ちょっと…怖いって酷くない⁉︎
でも、結果的に本当に二人きりになれたんだし?終わり良ければ全て良し!ってやつでしょ‼︎」

「やっぱ、遥は俺と一緒にいたいのか……」

「そんなの当たり前じゃん!」

そう言うと、遥は指を絡ませてきた。

「ちょっ…遥、やめろっ……」
「僕ね、ひーくんに会うのずっと楽しみにしてたんだよ?きっと、男らしくなってるんだろうなぁって。だからさ、これからはひーくんが僕のこと、守って?」

自然と体が密着して、遥の薄い胸板が、
俺の腹に当たる。

「何だよ…」
「ひーくん…照れてるの?」
「そんなこと‼︎…ねぇし」
「嘘耳、真っ赤だよ。僕にドキドキしてくれたんだ、嬉しい」

いつの間にか、鼓動は自分では制御出来ない程に早くなっていた。
やっぱり、俺、遥のこと好きなのかな…

「遥が…可愛すぎたから…」
「ん?何て言ったの?」
「…ばか。遥のばか!
もう、口きいてやんねぇ」
「え〜、しゃべろーよぉー、ひーくん!」
「……とりあえず、離れてくんね?」

このままだと、
俺の心臓の機能が停止してしまう……‼︎