「肌すっっごい白いよねー!」
「何使ってるの?」
「それが…特に何も使ってないんだよね」
「えぇっ⁉︎じゃあ、遺伝的な⁉︎」
「そうかも…」
「ちょ〜うらやまし〜‼︎」」



「なあ。見ろよ」
「何だよ…」
「あっち」
「ん?」
 
 俺は近藤が指差した方向に目をやった。
 
「ていうか、今日の放課後、みんなでスラバ行かない?」
「いいね!僕も新作、飲みたいなぁって思ってたんだよね〜」
「じゃあ、決まりね!」
「みんな〜今日はひなの奢りだよー!」
「ちょっと、すず!今、うち、金欠なんですけど‼︎」
「あはははは!」
「ちょっと遥くん、笑いすぎ!」

「あー、もうすっかり馴染んでるよな、”門脇”」

 波乱の体育祭から早いもので一週間が経った。
 当然、俺と遥の関係はクラスメイトの注目の的となった。そして驚くべきことに遥は素直に俺と幼馴染であるという事実を明かしてしまったのだ。
 遥曰く、下手な嘘をついて、後で困るよりマシとのこと。まあ、正論ではある。
 ちなみに、借り物競争のお題が「好きな人」だった事までは広まらなかった。
 この事を言いふらさないでいてくれた小泉さんには本当に感謝しかない。
 まあそんなこんなで、俺と遥の話題はいつの間にか忘れ去られ、穏やかな日常に戻ったわけだ。
遥のクラスでの様子はと言えば、
 転校してきてわずか一カ月で順調に友人を増やし、既にスクールカーストの頂点とも言えるグループの女子たちとつるむようになっていた。
 現に今も、数人の女子によってつくられた輪の中心で、笑顔を振りまいている。
 遥が居る所とは俺の席とじゃかなりの距離があるので、会話の内容までは分からないが。
 
「確かにすげぇとは思う。あれだけの人数の異性と仲良くなれるのは」
「なぁ〜。逆に男と喋ってるの見たことねぇわ」
「やっぱりああいうタイプの男って、同性からは嫌われてるのか?」
「まぁー、なよなよしてて男らしくないとか思われてるんじゃね?オレは全然そんなこと思わないけどな?」
「なるほど…」
「だって、自分らしく生きるのが一番だろ?周りの奴からどう思われていようと」

 近藤みたいな考え方は当たり前のようでいて、心に余裕が無ければ出来ないもののような気がする。
 
「流石、彼女持ちは違うな」
「それ…褒めてんのか?」
「ノーコメント」
「ったく、素直じゃねぇなあ」
 
 よいしょ、と言いながら、近藤は椅子から立ち上がった。
 
「どこ行くんだ?」
「いや、ちょっと門脇クンの男友達第一号になってあげようかなと思ってさ」
「ふぅん、そうかよ」
「何でお前が不機嫌そうになってんだよ?」
 「別に?お前に友達が増えようとどうでもいい。好きにしろ」

 近藤には俺がそんな風に見えてるのか。
 やっぱり、こいつには何でも見破られてしまうな…
 要するに俺は、嫉妬してしまっていたのだ。
遥と仲良くなろうとしている近藤に対して。
我ながら幼稚だな、と思う。