借り物競走は見ているだけで十分と思えるほどに
面白かった。

 お題は、眼鏡をかけている人とか、
運動部に入っている人といった感じ。
 借り『物』というより、借り『人』だけどな。
 ちなみに俺は一回も借りられていない。

 そして、いよいよ遥の番がやって来た。
 スタートラインに並んだ出場者は笛の音を
合図に一斉に走り出した。
そして、いくつかのハードルを超えると
目の前に現れた箱に手を突っ込んだ。

この中にお題が書かれた紙が入っているのだ。
 遥も、
箱から一枚の紙を取り出して、お題を確認している。


ん?

んん??

なんか、遥の顔が赤いような気がするんだが。

 遥は少し考えこむような仕草をした後、
客席に向かって走り出した。

 一体、誰を連れていくんだろう。
 あれ?
 あれあれ?
 何か、俺の方に向かってきてるような……
 
「うおっ⁉︎」
 
 突然、腕を掴まれた。
 
「早く!走るよ!」
「いや、ちょっと!」
 
 訳が分からないまま、遥に連れられ俺は走った。
 そして、何とかゴールした。結果としてはビリだったけど。
 
「はぁはぁ……」
 
 俺は倒れるように芝生の上に寝転んだ。
 いきなり、走らされたからか、かなり疲れた。
 
「お題……何だったんだよ。」
「言わなくても、分かるでしょ」
「はぁ?分かるわけないだろ、俺を何だと思ってるんだよ⁉︎」
「……これ。」
 
 遥が差し出して来た紙を受け取る。
 どれどれ…… 
 
「あー……」
 
 今時、こんなベタなのあんのかよ。
 遥は頬を赤く染め、うつむいていた。
 その様子が何とも可愛らしくて、見ているこちらの方が恥ずかしくなってきた。
 
「せ、選抜リレー頑張ってこいよ」
「うん、ありがと」
 
 遥との空気感に耐えられなくて、
俺は逃げるようにその場を後にした。