7
二人で合宿所を出て、砂浜へ行く。
サラサラの砂を踏み締めて、しばらくは二人とも黙って歩いていた。
空には綺麗な三日月が浮かんでいる。
海は月の光に煌めいていた。
しばらく歩くと、雪室型のアート作品の場所へ辿り着いた。
モザイクタイルの間に小さな光る石が埋め込まれていて、ぼんやりと光っている。
「蓄光石が埋め込まれてるんだよ」
夏目先輩がボソッと教えてくれた。
「蓄光石?」
「うん。昼間に紫外線を吸収して、夜になると光る人工の石だって。幻想的な光だよな」
「そうですね」
作品鑑賞用のベンチに二人で並んで座った。
海と月と、ぼんやりと光るアート。
打ち寄せる波の音。
不思議な空間。
そして隣には大好きな夏目先輩。
「敬、お前は好きな人とかいるの?」
「何でですか?」
突然の先輩の質問にドキドキする。
「いや、あんまりそうゆう話をした事なかったなぁと思って」
「好きな人くらいいますよ」
「そっか。そうだよな」
「田中先輩に何か言われたんですか」
「まあ」
夏目先輩はベンチに座ったまま、両手を組んでグーっと伸びをした。
先輩の喉元が白く艶かしくて、思わず目を逸らす。
俺、今日なんか変だ。
先輩に触れたくて堪らない。
「あー!!敬!生きるってめんどくせーな!」
「先輩何言ってるんですか」
「鮎子がさ、俺は淡白過ぎて嫌だったんだって。一緒にいると不安になったんだってさ」
「はあ」
「そう言われてもな。……鮎子には悪いんだけど、確かに鮎子と一緒にいてドキドキした事とか無かった。キスとかセックスとか、興味はあったけど、こんな感じなんだな、くらいだったし」
「そ、そうなんですね。すみません、俺は何にも経験無いんで、よく分からなくて…」
「そっか。悪いな。なんか変な話しちゃったな。……さっき鮎子がさ、俺の事ゲイなんじゃないかって言いやがった。俺は別に男が好きなわけじゃないのに」
俺は胸が痛くなった。
ほんとにこうゆう時って、胸が痛くなるんだな、とぼんやり思う。
「先輩、じゃあ、試しに俺とキスしてみますか?」
今日の俺はどうもおかしい。
よく考える前に言葉が先に出てしまった。
「え?」
俺は先輩の顔を見つめると、その顔に嫌悪感や戸惑いの感情が現れていない事に意表を突かれる。
先輩はただその大きな瞳を見開いて、俺の顔を見ているだけだった。
俺は先輩の顔を両手で包み込む。
ずっと夢見ていた。
こんなふうにこの人の顔に触れる事を。
「敬、」
先輩の口から次の言葉が出てこないように、俺は先輩の唇にキスをした。
先輩の唇は柔らかくて、もっと味わいたくて、俺は歯止めが効かなくなった。先輩の唇を夢中で押し開く。温かな口の中に舌を押し込んで先輩の舌を吸う。先輩の舌も唇も一緒くたに食いつくようにして味わった。
「んっ…敬っ!ハァッ…」
我に返って先輩から離れる。
先輩も俺も息を切らしていた。
俺を見る先輩の目は甘く潤んでいるように見えた。
「すみません…俺、止まんなくなっちゃって…」
「あ…うん」
「もう…戻りますか?」
「そうだな」
先輩と俺は、黙って来た道をゆっくりと戻った。
合宿所へ着いて、雑魚部屋へ行くと、布団が敷き詰めてあって、みんな思い思いの格好で眠っている。
洗面所には使い捨ての歯ブラシが置いてあったから、二人並んで歯を磨いた。
雑魚部屋へ戻ると、お互い離れた場所に空いている布団を見つけて横になる。
夢だった、じゃ、済まされない事をしてしまった。
でも…先輩とのキスは…夢のように気持ち良かった。
二人で合宿所を出て、砂浜へ行く。
サラサラの砂を踏み締めて、しばらくは二人とも黙って歩いていた。
空には綺麗な三日月が浮かんでいる。
海は月の光に煌めいていた。
しばらく歩くと、雪室型のアート作品の場所へ辿り着いた。
モザイクタイルの間に小さな光る石が埋め込まれていて、ぼんやりと光っている。
「蓄光石が埋め込まれてるんだよ」
夏目先輩がボソッと教えてくれた。
「蓄光石?」
「うん。昼間に紫外線を吸収して、夜になると光る人工の石だって。幻想的な光だよな」
「そうですね」
作品鑑賞用のベンチに二人で並んで座った。
海と月と、ぼんやりと光るアート。
打ち寄せる波の音。
不思議な空間。
そして隣には大好きな夏目先輩。
「敬、お前は好きな人とかいるの?」
「何でですか?」
突然の先輩の質問にドキドキする。
「いや、あんまりそうゆう話をした事なかったなぁと思って」
「好きな人くらいいますよ」
「そっか。そうだよな」
「田中先輩に何か言われたんですか」
「まあ」
夏目先輩はベンチに座ったまま、両手を組んでグーっと伸びをした。
先輩の喉元が白く艶かしくて、思わず目を逸らす。
俺、今日なんか変だ。
先輩に触れたくて堪らない。
「あー!!敬!生きるってめんどくせーな!」
「先輩何言ってるんですか」
「鮎子がさ、俺は淡白過ぎて嫌だったんだって。一緒にいると不安になったんだってさ」
「はあ」
「そう言われてもな。……鮎子には悪いんだけど、確かに鮎子と一緒にいてドキドキした事とか無かった。キスとかセックスとか、興味はあったけど、こんな感じなんだな、くらいだったし」
「そ、そうなんですね。すみません、俺は何にも経験無いんで、よく分からなくて…」
「そっか。悪いな。なんか変な話しちゃったな。……さっき鮎子がさ、俺の事ゲイなんじゃないかって言いやがった。俺は別に男が好きなわけじゃないのに」
俺は胸が痛くなった。
ほんとにこうゆう時って、胸が痛くなるんだな、とぼんやり思う。
「先輩、じゃあ、試しに俺とキスしてみますか?」
今日の俺はどうもおかしい。
よく考える前に言葉が先に出てしまった。
「え?」
俺は先輩の顔を見つめると、その顔に嫌悪感や戸惑いの感情が現れていない事に意表を突かれる。
先輩はただその大きな瞳を見開いて、俺の顔を見ているだけだった。
俺は先輩の顔を両手で包み込む。
ずっと夢見ていた。
こんなふうにこの人の顔に触れる事を。
「敬、」
先輩の口から次の言葉が出てこないように、俺は先輩の唇にキスをした。
先輩の唇は柔らかくて、もっと味わいたくて、俺は歯止めが効かなくなった。先輩の唇を夢中で押し開く。温かな口の中に舌を押し込んで先輩の舌を吸う。先輩の舌も唇も一緒くたに食いつくようにして味わった。
「んっ…敬っ!ハァッ…」
我に返って先輩から離れる。
先輩も俺も息を切らしていた。
俺を見る先輩の目は甘く潤んでいるように見えた。
「すみません…俺、止まんなくなっちゃって…」
「あ…うん」
「もう…戻りますか?」
「そうだな」
先輩と俺は、黙って来た道をゆっくりと戻った。
合宿所へ着いて、雑魚部屋へ行くと、布団が敷き詰めてあって、みんな思い思いの格好で眠っている。
洗面所には使い捨ての歯ブラシが置いてあったから、二人並んで歯を磨いた。
雑魚部屋へ戻ると、お互い離れた場所に空いている布団を見つけて横になる。
夢だった、じゃ、済まされない事をしてしまった。
でも…先輩とのキスは…夢のように気持ち良かった。