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 すっかり辺りは暗くなった。

 合宿所の小さな広場でバーベキューが始まる。

 俺と夏目先輩は、二人でせっせと肉を焼いていた。申し訳程度にしか無かった野菜類は、焼いて紙皿に乗せておくと、そのまま冷めていった。やっぱりみんなの狙いは肉やフランクフルトだ。

 「敬、お前もちゃんと食べろよ?」

 「大丈夫です。食べてますから。すみません、先輩に手伝わせてしまって…」

 「仕方ないよ。うちは一番部員数少ない上に、本来なら肉焼くのは一年の仕事なんだけどさ、うちの部の一年はお前だけなんだから。二年の三人なんて塾があるからって合宿来ないし」

 「仕方ないですね。俺は夏目先輩と一緒にバーベキューやれて凄く嬉しいんで、全く問題無いです」

 「ハハッ、可愛い奴だな!」

 「先輩、鼻の頭に炭が付いちゃってますよ」

 俺は先輩の鼻の頭を指で拭う。

 「何イチャついてんのよ」

 「鮎子」

 いつの間に来たのか、田中先輩が立っていた。

 「私も何か食べていい?」

 「あぁ、ここの肉はもう焼けてるぞ」

 「あー、私はこの焼き野菜でいいわ。今ダイエット中だし」

 田中先輩は紙皿の上で冷めていたピーマンと玉ねぎ、椎茸に焼肉のタレを掛けて食べ始めた。

 「炭火で焼くと何でも美味しいわね」

 「まあ、鮎子がそれでいいなら」

 だいぶみんな食べ終わって、まったりした空気になってきた。

 「田中先輩、何か飲みますか?烏龍茶か、オレンジジュース、コーラがあるみたいです」

 「常温のミネラルウォーターがあるといいんだけど」

 「見て来ます」

 俺は荷物が集めてある場所へ見に行く事にした。ガサガサとクーラーボックスの中を探すと、2リットルのミネラルウォーターのペットボトルを見つけた。

 「ありましたー」

 と言って俺が戻ると、夏目先輩と田中先輩が険悪な雰囲気で見つめ合っていた。

 「あ、失礼しました…」

 俺は近くのテーブルにペットボトルをそっと置くと、その場を離れようとした。

 「敬!待って。俺も行く」

 すると、夏目先輩が追って来た。

 「大丈夫なんですか?」

 「うん。もういい。敬、ちょっと散歩付き合ってよ」

 「はい」