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港で貰った地図に、島に点在するアート作品の場所が記されていて、各場所にあるスタンプを押せるようになっていた。
島の中は坂道も多いし、自転車を降りたり乗ったりしながら、アート作品の写真を撮り、一つ一つスタンプを集めていった。
酷く喉が渇いて、持って来たペットボトルの水はすぐに無くなってしまった。自販機を探しても見つからない。仕方なく港まで戻った。
ガコンッ
港のゲート近くの自販機で水を買う。
ゴクゴクと喉を鳴らしてよく冷えたミネラルウォーターを呷る。
「はぁーっ!美味い!」
思わず声が出てしまう。
「あの…あなた、欅高校の人?」
女性の声に振り向くと、白いレースのブラウスにジーンズ姿の綺麗な女の人が立っていた。
「あ、そうです。欅高校の合宿で、この島に来てます」
「ひょっとして、あなた写真部?」
女性は俺の首に下げられたカメラを見つめている。
「そうです」
「やっぱり。その麦わら帽子、琉生のでしょ」
「そうですけど…あの、あなたは?」
「一応、写真部の副部長。田中鮎子」
「そうだったんですね!あ、俺は一年の大川敬です。よろしくお願いします」
「まったく。私がプレゼントした麦わら帽子…」
田中先輩がイライラした様子で呟く。
「あ、合宿所へご案内しましょうか?」
「お願い出来る?私、この島初めてだから」
「みんなレンタサイクルするんですけど、田中先輩も借りますか?合宿所まで少しあるんで、歩くの大変かな」
「レンタサイクル?この荷物どうしよう」
田中先輩の足元にはキャリーケースが置いてあった。
「あ、じゃあ俺が運びます。自転車の前籠にギリギリ乗るかな」
俺は自分の自転車の前籠にキャリーケースを乗せる。少しよろけるけど、ゆっくり行けば運べそうだった。
田中先輩も自転車を借りて、二人で合宿所へ向かう。
「ありがとう。大川くん、いい人ね」
「いえ」
綺麗な人だ。
夏目先輩とどんな関係なんだろう。
こんな高価そうな物をプレゼントするくらいだから、やっぱり彼女なのかな。
そう思うと途端に胸が苦しくなった。
田中先輩と部屋へ入ると、夏目先輩はぐっすり眠っているみたいだった。
「琉生!!起きなさいよ!」
田中先輩は履いていたサンダルを脱いで、夏目先輩が寝ているベットへ上がる。
「えっ!鮎子?!」
「ふふ。来ちゃった」
夏目先輩が体を起こす。
ベットの上で見つめ合う二人を見ていられなくて、
「あ、俺、みんなの様子見て来ます」
と言って、部屋を出ようとした。
「敬、俺も行くわ。鮎子も来いよ。そろそろバーベキューの準備があるからさ」
「えー!今着いたばかりなんだから。少しここで休ませてよ」
「分かったよ。じゃあここで休んでろ。吉川に鮎子の寝る場所があるか聞いてくる」
「私は琉生と一緒の部屋でいい」
「そんなわけにいかないだろ。俺達はもう別れたんだから」
「別にいいでしょ。私はこの部屋で寝るから」
「敬、とりあえず下行こうか。鮎子、大人しくしてろよ」
俺と夏目先輩は部屋を出た。
「鮎子を案内してくれてありがとな。アイツの相手は大変だっただろ」
「いえ。良かったら俺、部屋替わりますよ?俺は雑魚部屋でいいんで」
切なすぎる。
せっかく夏目先輩と二人部屋になれたのに…。
「それは俺が困るよ。鮎子と二人はキツい」
「そうなんですか?」
「うん。一年の時に少し付き合ったんだけど、すぐにアイツの方から別れ話されて、別れたんだよ。俺達の学年の部員は俺と鮎子しかいないから、二年の終わりに一応副部長になって貰ったんだけど、今まで一切部室にも顔出さなかった癖にいきなり合宿に来るなんて何考えてるんだか…」
「先輩とよりを戻したいんじゃないですか?」
「それは無いと思うよ。あっても俺困るし…」
「お!琉生!敬!バーベキュー始めるぞ!」
食材がパンパンに入ったビニール袋を両手に持った吉川先輩がちょうど通りかかった。
「あ、吉川。あのさ、鮎子が来たんだけど、部屋ってまだ空いてる?」
「えー!鮎子来たの?!!雑魚部屋なら寝る場所なんていくらでもあるけど、男ばっかだから鮎ちゃん寝かせるわけにいかないしなー。女子部屋はもういっぱいだよ」
「だよな」
「先輩、やっぱり俺が雑魚部屋に移りますよ」
「そんなら俺も敬と雑魚部屋へ行くわ。二人部屋を鮎子に使わせてやろう」
「よし!じゃあ、琉生と大川くんでバーベキューコンロ組み立ててくれる?」
「分かった!」
「りょーかいです!」
港で貰った地図に、島に点在するアート作品の場所が記されていて、各場所にあるスタンプを押せるようになっていた。
島の中は坂道も多いし、自転車を降りたり乗ったりしながら、アート作品の写真を撮り、一つ一つスタンプを集めていった。
酷く喉が渇いて、持って来たペットボトルの水はすぐに無くなってしまった。自販機を探しても見つからない。仕方なく港まで戻った。
ガコンッ
港のゲート近くの自販機で水を買う。
ゴクゴクと喉を鳴らしてよく冷えたミネラルウォーターを呷る。
「はぁーっ!美味い!」
思わず声が出てしまう。
「あの…あなた、欅高校の人?」
女性の声に振り向くと、白いレースのブラウスにジーンズ姿の綺麗な女の人が立っていた。
「あ、そうです。欅高校の合宿で、この島に来てます」
「ひょっとして、あなた写真部?」
女性は俺の首に下げられたカメラを見つめている。
「そうです」
「やっぱり。その麦わら帽子、琉生のでしょ」
「そうですけど…あの、あなたは?」
「一応、写真部の副部長。田中鮎子」
「そうだったんですね!あ、俺は一年の大川敬です。よろしくお願いします」
「まったく。私がプレゼントした麦わら帽子…」
田中先輩がイライラした様子で呟く。
「あ、合宿所へご案内しましょうか?」
「お願い出来る?私、この島初めてだから」
「みんなレンタサイクルするんですけど、田中先輩も借りますか?合宿所まで少しあるんで、歩くの大変かな」
「レンタサイクル?この荷物どうしよう」
田中先輩の足元にはキャリーケースが置いてあった。
「あ、じゃあ俺が運びます。自転車の前籠にギリギリ乗るかな」
俺は自分の自転車の前籠にキャリーケースを乗せる。少しよろけるけど、ゆっくり行けば運べそうだった。
田中先輩も自転車を借りて、二人で合宿所へ向かう。
「ありがとう。大川くん、いい人ね」
「いえ」
綺麗な人だ。
夏目先輩とどんな関係なんだろう。
こんな高価そうな物をプレゼントするくらいだから、やっぱり彼女なのかな。
そう思うと途端に胸が苦しくなった。
田中先輩と部屋へ入ると、夏目先輩はぐっすり眠っているみたいだった。
「琉生!!起きなさいよ!」
田中先輩は履いていたサンダルを脱いで、夏目先輩が寝ているベットへ上がる。
「えっ!鮎子?!」
「ふふ。来ちゃった」
夏目先輩が体を起こす。
ベットの上で見つめ合う二人を見ていられなくて、
「あ、俺、みんなの様子見て来ます」
と言って、部屋を出ようとした。
「敬、俺も行くわ。鮎子も来いよ。そろそろバーベキューの準備があるからさ」
「えー!今着いたばかりなんだから。少しここで休ませてよ」
「分かったよ。じゃあここで休んでろ。吉川に鮎子の寝る場所があるか聞いてくる」
「私は琉生と一緒の部屋でいい」
「そんなわけにいかないだろ。俺達はもう別れたんだから」
「別にいいでしょ。私はこの部屋で寝るから」
「敬、とりあえず下行こうか。鮎子、大人しくしてろよ」
俺と夏目先輩は部屋を出た。
「鮎子を案内してくれてありがとな。アイツの相手は大変だっただろ」
「いえ。良かったら俺、部屋替わりますよ?俺は雑魚部屋でいいんで」
切なすぎる。
せっかく夏目先輩と二人部屋になれたのに…。
「それは俺が困るよ。鮎子と二人はキツい」
「そうなんですか?」
「うん。一年の時に少し付き合ったんだけど、すぐにアイツの方から別れ話されて、別れたんだよ。俺達の学年の部員は俺と鮎子しかいないから、二年の終わりに一応副部長になって貰ったんだけど、今まで一切部室にも顔出さなかった癖にいきなり合宿に来るなんて何考えてるんだか…」
「先輩とよりを戻したいんじゃないですか?」
「それは無いと思うよ。あっても俺困るし…」
「お!琉生!敬!バーベキュー始めるぞ!」
食材がパンパンに入ったビニール袋を両手に持った吉川先輩がちょうど通りかかった。
「あ、吉川。あのさ、鮎子が来たんだけど、部屋ってまだ空いてる?」
「えー!鮎子来たの?!!雑魚部屋なら寝る場所なんていくらでもあるけど、男ばっかだから鮎ちゃん寝かせるわけにいかないしなー。女子部屋はもういっぱいだよ」
「だよな」
「先輩、やっぱり俺が雑魚部屋に移りますよ」
「そんなら俺も敬と雑魚部屋へ行くわ。二人部屋を鮎子に使わせてやろう」
「よし!じゃあ、琉生と大川くんでバーベキューコンロ組み立ててくれる?」
「分かった!」
「りょーかいです!」