4


 夏目先輩と合宿所へ遅れて辿り着くと、もうみんな部屋割りも決めて荷物を運び込んでいた。

 「はい、琉生と大川くんは二人部屋ね。いいだろ、二人部屋は布団で雑魚寝じゃなくて、ちゃんとベットだからな」

 「え?そんないい部屋?」

 夏目先輩が吉川先輩から部屋の鍵を受け取る。

 「ま、写真部部長なんだから堂々と使えよ。それから大川くんは、長谷川がさっきの事を反省して、二人部屋に入れってさ。自分は雑魚部屋へ行ったよ」

 「ありがとうございます!」

 俺は騙してくれた長谷川先輩に感謝した。夏目先輩と二人部屋。嬉しすぎる。

 二人で部屋へ向かう。雑魚部屋は一階、二人部屋は二階にあった。

 「去年は前の部長と副部長が使ってたから、俺は二階へ上がるの初めてなんだよ」

 夏目先輩も嬉しそうだ。

 「そう言えば、写真部の副部長って誰なんですか?」

 「あー、鮎子か。あいつ幽霊部員なんだよ。全然来ない」

 「そうなんですね」

 部屋は案外広かった。

 トイレに風呂場。

 ベットが二つ。ソファーまである。

 そして窓の向こうには海が広がっていた。

 「多分、引率の先生用の部屋なんだよな。俺、こっちの壁際のベットでいい?」

 「窓側じゃなくていいんですか?」

 「うん。壁際の方が落ち着くから」

 夏目先輩がベットへ倒れ込む。

 「敬、夜のバーベキューまでは自由時間だから、島を散策して来たら?」

 「先輩は行かないんですか?」

 「ちょっとだけ休む。最近、受験勉強ばっかだったから体力落ちてるわ。疲れた」

 「分かりました。ゆっくり休んで下さい」

 俺が部屋を出ようとすると、

 「敬、これ被ってけ。島の日差し舐めてるとヤバいからな」

 夏目先輩が紐付きの麦わら帽子を投げてくれた。帽子の中のタグを見て驚く。

 「なんかブランド物なんですけど。こんな高そうな物、借りれませんよ。汚したら怖いし」

 「あー、いいの。貰い物だからさ。俺、そんなに気に入ってないし。お前の方が背も高いし、顔小さいから似合いそう。何だったらあげるよ」

 「貰えませんよ!!とりあえず、じゃあお借りします!」

 夏目先輩の麦わら帽子を被って、俺は島の探索へ出発した。