「あー!よかった!これで安心して卒業できるよ~、でも卒業嫌だー!」

「ほんとに今日で終わっちゃうのか」

「なんか実感なさすぎるよね」

みんなに結果を伝えたことで肩の荷が下りたような感覚と同時に、今日で終わりなのだという喪失感に襲われる。
でもそれはみんなも同じなようだ。
もう式典も終わり、学校を出たら本当に私達の高校生活は終わりらしい。

「みんな…別々になっても会ってくれるよね?」

「当たり前じゃん!」

「毎日?」

「毎日は厳しいけど」

「なら寂しい!嫌だ!」

一番寂しがりやな凪咲ちゃんが分かりやすく駄々をこねる。

「卒業したくらいで俺らの関係は変わらないんじゃね?」

「うん。こうやって定期的に六人で会えばいい」

「なんで急にまともなこと言うの、また泣いちゃうよー…」

山宮くんの言う通りだ。
環境が変わったって会える回数が減ったって、またこの六人で会えたら関係なんて何も変わらない。
そんなことで、きっと私達は壊れない。

「ねぇ、記念にみんなで写真撮ろうよ!」

愛梨ちゃんがお父さんから借りたというデジタルカメラを手に言った。

「確かに六人で撮ったことないかもね」

「今どきデジカメ?スマホでよくない?」

「こういう時は記念だからいいの!はいみんな並んで!」

愛梨ちゃんの掛け声で私達五人は二列に並ぶ。
どこからか取り出した三脚にカメラを設置した愛梨ちゃんはみんなに位置の指示を出していた。

「あ~、後ろの奏葉と山宮!もうちょっと寄って」

「このくらい?」

右横にいる山宮くんが私にぐっと近づいた。
すぐそこに山宮くんがいる。そのことにまだ慣れず、すぐに顔を赤くしてしまう。

「あ、あの、ちょっと近い…」

「神谷の指示だから」

「いや私イチャつけって言ってないから。奏葉から離れる!」

「彼氏の特権だと思ったのに…」

お互いの気持ちを伝え付き合うことになったあの日から山宮くんは、分かりやすく気持ちを表に出すようになった。
もちろんそ行動はみんなの前でも変わらない。
付き合うことになったのがバレたのも、山宮くんの行動が急に大胆になったからだ。
本人曰く「付き合うことになったのに好きな気持ちを隠す方が分からない」そうだが、私はまだその山宮くんに慣れておらず、毎回嬉しさよりも緊張や照れが勝ってしまう。

「撮るよ~、はいっ」

愛梨ちゃんはタイマーを設定し、私の横に立った。

「掛け声何にする?」

「えっ、掛け声とかあるの?」

「ほら、はいチーズみたいな」

「うーんじゃあ…卒業、おめでとうー!」

次の瞬間カメラのシャッター音がして、私達の高校生活は幕を閉じた。