「そう。もっと他人を頼ろうと思う。この病気はきっとこれから先も付き合っていくものになるだろうから、家族や友達の力も借りることにして一人で背負うのを辞めたんだ」
そう言った山宮くんの顔はどこかすっきりしていて、長年の肩の荷が下りたような解放感に溢れていた。
初めて病気の話を聞いた時からずっと気になっていたことだった。
山宮くんの病気についてはたくさん自分でも調べたけれど、やっぱり山宮くん本人の気持ちが一番大切だと思っていたから、こうして私に知らせてくれることが嬉しい。
私が山宮くんのことを信頼しているのと同じように、山宮くんも少しは信頼してくれているのかもしれない。
「すごくいいと思う…。私も山宮くんが困ってる時は力になりたい。力になるっていっても私なんかには何もできないと思うんだけど…傍にいることとかはできるから」
「それで十分だよ」
「え?」
山宮くんは横に座る私をまっすぐに見つめて、言った。
「俺は、白石さんに傍にいてもらえることが一番嬉しい」
目が離せない。山宮くんは、今なんて。
「白石さんのことが好きだよ」
こんな時まで優しく包むこむような声を私にくれる山宮くんのことが愛おしくて、涙が頬を伝うのが分かる。
これは何の涙だろう。うれし涙なのか、それとも違うのものなのか。
答えは分からないままその涙は山宮くんの手の甲によって拭われる。
「泣かないで…」
「ごめんっ…」
「ううん、いいよ」
溢れ続ける涙は全く止まらなくて、そんな私を山宮くんが優しく見守ってくれているのが目の端に見える。
「ほんと、に?」
「ほんとに」
「好きって、だって…」
「最初は少し目が離せない女の子ってだけで、これが恋愛感情とは結び付かなかった。白石さんに言われてから、この気持ちに名前が付いた」
山宮くんはその時のことを思い返すように話している。
「なんで私、なの」
「なんで…かなぁ。気がついたら好きになってたし、理由はあんまり分かんないかも。けど毎日白石さんのことを目で追っちゃうし、話せたらすごく嬉しいし、笑顔を見れた日は自分の中で幸せな日になる。とにかく…すごい、好き」
山宮くんの優しい言葉に触れる度嬉しくて、照れくさくて抱きしめたい衝動に襲われる。
もうこれ以上泣き顔は見せたくなかったし、私は山宮くんの胸の中に飛び込んだ。
「ふふ、どうした?」
「大好き…です」
「…うん、お揃いだね」
そう言って笑う山宮くんは胸の中で泣き続ける私の頭を大きなてのひらで撫でてくれた。
好きな人と結ばれるのは、想像以上にあったかいものだった。