優等生アデュー



二人で走ること数分。見慣れた図書館のドアが見えた。
山宮くんはそのドアを開けて、私を中に入れる。
久しぶりにこんなに全力疾走をしたからか、息が苦しい。
息を整えながら向かったのは、私達がここで出会った場所。

「うわ、思ったより疲れたー」

「ほんとだよ。山宮くんいきなり走っていっちゃうんだもん」

「ごめんごめん」

一つのソファーに並んで座るのは初めてだった。常に肩が触れているのが少し恥ずかしい。

「でもどうしてもここがよかったんだ。やっぱり一番思い出深いし」

「そうだね…」

ここで山宮くんと出会って、話すようになってからもう約九か月が経つ。
あの日から、私の世界はがらりと変わった。

「でも正直ここに来たのが白石さんでよかったってあの頃から思ってたよ」

「嘘だぁ」

「ほんとだってまぁ他の生徒ならそもそも図書館にすら来ないと思うけど」

「ふふ、確かに」

この九か月間、ここは私達の秘密基地のような場所だった。
教室では実現できない、唯一私達が二人きりでいられる場所。
最初は孤独だった私達を図書館が繋いでくれたのだと今は思う。

「ここで白石さんと話すようになって、色んなことを知って、自分と似てるなって思ったんだ」

「どうして?」

「だって俺達は、ずっと周りを気にして自分を取り繕ってる優等生じゃん」

「自分で言う…」

けれど、山宮くんの言っていることはもちろん合っている。
一見正反対に見える私達にも、優等生という共通点があった。
二人とも違う方向だったけれど、ずっと優等生の仮面を被って生きてきたことに違いはない。
そのことに気がついた時から、お互いがお互いのことを仲間だと認識していたようにも感じる。

「だから自分と白石さんがいて、安心した。俺だけじゃないんだなって」

「それは私もだよ。何回も助けてもらっちゃった」

「お互い様だろ。俺だって駄目になる時もあったし」

駄目になる、というのはきっと病気のことを言っているのだろう。

「でも決めたんだ。白石さんが決意したのと同じで、俺も病気に対しての考え方を変えようと思って」

「考え方?」