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「奏葉ー!あけおめ!」

「愛梨ちゃん!久しぶり!あけましておめでとう」

数日前、年が明けた。
新しい年になりとうとう受験もすぐそこというところだが、今日だけみんなと会って初詣に行く約束をしている。
それぞれみんな忙しく年越し前は全く会えず仕舞いだったので、久しぶりの再会が嬉しい。
初詣の場所に選んだのは学校から近い小さな神社。
幸い年を明けてから少し経っていたので人が少なく、動きやすい。
もちろん初詣はいつもの六人で。
いつの間にかこの六人でいることが当たり前になった去年。
それが当たり前じゃなくとても幸せなことなんだと噛みしめながら、今年も過ごせるといいな。

「山宮くん、久しぶり!」

「そこはあけましておめでとうでしょ」

「あ、あけましておめでとう!」

山宮くんと今年初めて顔を合わせた。
シックなコートに柔らかいマフラーがよく似合っていて、今日も綺麗に輝く金色の髪。
久しぶりに会ったけれどその間山宮くんへの気持ちが減ることはなく、むしろ増したようにも感じる。

「元気そうでよかった」

「元気だよ。山宮くんのおかげで」

「俺何もしてないけどね」

山宮くんはそう言って笑うけれど、本当に私は助けてもらってばかりだ。

「せっかくだからみんなで参拝しようぜ!」

柏木くんの一声で、私達五人は賽銭箱の前に横並びになる。

「みんなの受験も上手くいくように、俺五円玉六枚分入れとくわ!」

「いや柏木が代表して六枚入れなくてもみんなそれぞれやるから!はい、一つだけ入れな」

「はい…」

まるで親子のようなやり取りをする愛梨ちゃんと柏木くんが面白い。
私もかばんの中から財布を出し、みんなと同じく五円玉を取り出した。

「ほんとに五円玉ってご縁あるのかなぁ」

「凪咲そんなこと言わない。もうここまできたら後は神頼みでしょ」

六人全員が賽銭箱にお金を入れ、それぞれ参拝を始める。
何を思い浮かべようか少し迷ったけれど、無難に受験が上手くいくようお祈りしておいた。
みんなは何を考えていたのだろう。

「柏木長すぎ。置いてくよ」

「あっ、待って!」

「何をそんな祈ることがあるのよ」

「いやそりゃいっぱいあるだろ!大学に行っても神谷に振られませんようにとかさ」

その言葉は予想外だったのか、愛梨ちゃんは顔を赤くして柏木くんの肩を叩いた。

「馬鹿!普通受験のこととかでしょうが!」

「受験は二の次だろ!神谷に振られたら元も子もねぇよ!」

以前愛梨ちゃんが柏木くんが自分のことをちゃんと好きでいてくれているのか分からないと不安そうにしていたことがあった。
確かに最初は愛梨ちゃんの好意から始まった恋だったけれど、いつしかその気持ちは柏木くんにもしっかり移っていたようだ。
世の中に永遠はないと知っていても、二人は何となくずっと一緒にいるんじゃないかと思ってしまう。
本当にそうなってほしいものだ。

「蘭と凪咲は?何お祈りしたの?」

「私は受験。共通テスト数日後だし」

「私も受験と後は恋!新しい恋に出会えますようにって」

「新しい恋って…あんた彼氏と別れたの⁈」

「うん。でももういいんだ~私は大学で超ハイスペック男子を見つけるの」

思いのほか吹っ切れていそうな様子の凪咲ちゃんに少し安心する。