教室に戻ると、私の顔を見た愛梨ちゃん達が自分の席から飛んできてくれた。

「奏葉っ…」

「愛梨ちゃん…」

そしてその勢いで、私は愛梨ちゃんに抱き着かれた。
肩に当たった愛梨ちゃんの手が少し震えているのが分かって、申し訳ない気持ちになる。

「あんた…頑張りすぎなんだよ。私らといる時くらい肩の力抜いていいんだよ!」

「ごめ…」

「そんなことしても当たり前に嫌いになんてならないし、奏葉は奏葉だから。それは絶対変わんないんだからね!」

涙が滲む愛梨ちゃんの声で、止まっていたはずの涙がまた押し寄せる。

「そうだぞ~もう心配かけないでよ。まぁ奏葉のことだから無理だろうけど」

「それでもいいから私達のところに帰ってきてね!」

涙で歪む視界の中で、笑顔の蘭ちゃんと凪咲ちゃんが見える。
私は今までみんなの何を見ていたんだろう。
こんなに素の私を受け入れてくれて、愛のある言葉をくれる人達なだというのに。
ずっと他人を疑って生きてきたけれど、一番信用していなかったのは私の方だった。
初めて信じたいと思えた人がみんなで本当に良かった。

「ねぇちょっとやだ~!なんで奏葉まで泣いてんの?」

「だって…」

「ほら拭いて、もう授業始まっちゃうよ。出られそう?」

「うん、もう大丈夫」

愛梨ちゃんは少し安心した顔で涙で濡れた私の顔を優しく拭いてくれた。
もうしばらくは、大丈夫だと思えた。
でもきっとまた駄目になってしまう時が来る。
その時はまたみんなに少し体を預けさせてもらおう。