普段の私なら授業をサボるなんて絶対にあり得なかったけど、今日ばかりはもうどうでもいいと思えた。

「もう…駄目かもしれない…っ」

「どうして?」

私が泣きながら話始めると、山宮くんは優しく問い返してきた。

「もう、疲れちゃった…。ずっとしたくもない勉強をすることも、学校で優等生でいることも、愛梨ちゃんや、みんなと同じにはなれないのも、全部嫌だ…」

「うん」

「けど、辞めたら私、全部なくなっちゃうよ…」

自分で言葉にしながら、また涙が溢れてきた。
どうしたらこの苦しみから解放されるんだろう。
いつになったら私は本当の私を認められる?

「白石さんは、頑張りすぎちゃうんだよね」

山宮くんは淡々と話し始めた。

「頑張って、ないよ」

「頑張ってるよ。ここ最近はもっと頑張っちゃってて心配になるくらいだった」

頑張ってなんかいない。
世の中には自分よりもっと秀でている人がいて、その人達に後れを取らないように最低限のことをしているだけ。
こんなのは頑張りじゃない。

「白石さんはもっと自分を褒めていいんだよ。頑張れなくたっていい。前にも言ったけど頑張れることは当たり前じゃないし、すごいことだよ」

「でも…そんな私、誰も認めてくれない。自分も、自分のこと認められない」

「白石さんは誰に何を認めてもらいたいの?」

その言葉に、少し戸惑った。山宮くんの言う通りだ。
私はずっと、何を求めているんだろう。
こんなになって頑張っているのは親のためかと言えば、それだけじゃない。
親に見捨てられるのが怖いのは一つの理由としてあるけれど、今は自分自身のために必死になっているような気がする。
自分の価値を無くしたくなくて、そのための頑張り方をどこかで間違えてしまったのかもしれない。

「最初は親や周りから失望されないようにって思ってた。けどいつの間にか…自分が、自分のことを認められなくなってた。」

「そっか。じゃあ白石さんはずっと自分を好きになるために、認めるために色んなことを頑張ってきてたんだね」

それなのに、いつの間にかどんどん自分のことが嫌いになって、認められなくなった。
他人とばかり比べて、優等生でない自分のことを愛せていないのは私の方だった。

「今の白石さんは頑張れなくなって優等生じゃなくなったら自分の価値が無くなったって思っちゃうかもしれないけど、俺はその度にそうじゃないって言い続ける。頑張りたいことは頑張り続けてもいいけど、優等生じゃなきゃ自分の価値がないなんてそんなことは絶対ないよ。俺が証明する」

「なんで…」

山宮くんは困ったように笑って言った。