まさか山宮くんが責任を感じて自分に苛立っていたとは思わず、私は慌てて否定した。

「あの時山宮くんが一番に助けに来てくれて嬉しかった。安心した。ヒーローみたいにかっこよかった」

「大袈裟だよ」

「本当にそう思ったんだもん。だから…そんなこと言わないでほしい。お願い」

私の思いが少し伝わったのか、山宮くんの顔は徐々に力が抜けていった。

「ほんと…優しいね、白石さん」

「山宮くんの方が優しいじゃん。私のこと助けてくれた」

「当たり前だよ。…怖かったでしょ、大丈夫?」

山宮くんは処置の終わった私の腕を手のひらで触れる。

「さっきまで怖かったけど、山宮くんの顔見た瞬間どっか行っちゃった。本当に相手を追い払っちゃうんだからすごいよ。やっぱり山宮くんは私のヒーローだね!」

「だから、大袈裟だって」

わざと大袈裟なことを言うと、山宮くんはやっと笑ってくれた。
よかった。やっぱり山宮くんには笑顔が一番似合う。
山宮くんの笑顔を見てやっと完全に安心できたような感覚だ。

「腕、ありがとう。みんなのところ戻ろっか」

「…まだ、よくない?」

山宮くんのその言葉の意味がすぐに分かって、心臓が鳴った。
私の勘違いだろうか。もしかしたら同じことを考えていたのかもしれない。
こんな形だったのは不本意だったけど、山宮くんと二人きりになれる時間が増えて喜んでいた自分がいる。
けれどみんなのところに戻らなくちゃと気持ちを切り替えた時だった。

「…うん」

右腕に触れている手のひらは、まだ離れていなかった。