「えっ?」
「今押せばいけるって。ほんとにこのままでいいの?」
愛梨ちゃんの言葉で、少し揺らぐ自分がいる。
このままの関係を望んだのは私だけど、山宮くんと一緒にいればいるほど欲張りになっていく。
もっともっとと今以上のことを望んでしまうのが怖い。
元々は私が山宮くんに憧れていて、すごく遠い存在だったのに、そんな私が欲張りになってもいいの?
「…いいの。これでいい」
「そっかぁ…まぁ、二人の問題だもんね!こっちからするとめちゃくちゃもどかしいんだけどな」
「ん?どういうこと?」
「何でもない~」
愛梨ちゃんはたこ焼きを頬張りながら、蘭ちゃん達と話し始めた。
私は何のことかよく分からないまま、さっき山宮くんにもらったベビーカステラを食べながらみんなの背中を追いかける。
しばらくみんなで色々な場所を回っていた時、後ろから肩を叩かれた。
みんなは前にいるはずだから、私の肩を叩く人なんていないはずなのにと不思議に思いながら振り返ると、そこには全く知らない男の人達が立っていた。
何となく嫌な予感がした。私の顔を舐め回すような視線がどこか気持ちが悪い。
他校の制服を着ているのでうちの生徒ではないのだろう。
少しガラの悪い容姿と喋り方が私の頭の中で危ないと叫んでいる。
「あ、意外と可愛い」
「意外とってお前」
「この後暇?向こうのお友達も連れて一緒にどう?」
きっとこの人達は愛梨ちゃん達目当てで私に話しかけてきたのだろう。
実際愛梨ちゃん達に当たられたら困るのだけれど、直接本人に話しかけられないで私を当たるなんて情けないなと思い、その人たちを無視して歩き出す。
「ちょ、無視はないっしょ」
けれど右腕を強めの力で掴まれてしまい、また振り返ざるを得なくなってしまう。
「君が嫌ならあの子達だけでもいいよ。正直君そこまでじゃないからいらないし」
自分の容姿のことを言われただけでなく、愛梨ちゃん達のことも軽く見られ、内心腹が立つ。
「他当たってください」
「いいから来いよ。話も聞けないの?」
更に強く腕を引っ張られることで、痛みが比例する。
顔に恐怖を出さないように必死だが、さっきから心臓の音がうるさい。
自分の脈が速くなるたびに焦りも増す。
「痛い…」
思わずそう声にしてしまった時、急に目の前が暗くなった。