「睦月お前…こんな王道なことで照れるタイプだっけ」

「照れてない」

「無理あるってそれは」

山宮くんも同じく柏木くんにからかわれていて、赤い顔を手で覆ってしまった。

「二人して照れないでよ~」

「照れてないよ!もう、次行こう!」

「はいはい~」

みんなにからかわれて少しくすぐったい気持ちと、照れくさい気持ちで恥ずかしくなってしまったので私は話を切り上げるように言った。
一瞬こんな風に言われることに対して山宮くんは嫌がっていないだろうかと不安になってしまったが、今の様子を見ていると嫌がられてはいないようだ。
私からしたら山宮くんとの時間が増えることは嬉しいことだけれど、向こうからしたらどう思っているのかは分からない。
自分で聞かなかったはずの山宮くんの気持ちを知りたくなってしまうなんて、私はなんて傲慢なんだろう。

「山宮くん、わたあめあるよ」

「…いいよ、今日は。みんなもいるし」

「そこの区別分かんないんだよな~」

「睦月食うの早すぎだろ」

甘党な山宮くんは廊下を歩いている両手にチョコバナナとクレープを持って頬いっぱいに頬張っていた。
ハムスターのように口いっぱいに頬張る姿がとても可愛くて、胸がきゅんと締め付けられる。
そんな不意の仕草だけでも山宮くんのことが愛おしくて、可愛いと思ってしまう。

「白石さん、たこ焼き買ってきた。いる?」

「うん!ありがとう」

「はい」

いつの間にか山宮くんが買ってきたたこ焼きも、一つ、一つ、と山宮くんの口の中に吸い込まれていく。
それを見つめていることに気づかれたのか、山宮くんはたこ焼きを一つ私に差し出してくれた。
私は自然と口を開けて、山宮くんからたこ焼きを受け取る。

「ん!美味しい!けどちょっと熱いね」

「うん、気を付けて」

「おいお前ら二人の世界入るなって!俺にもくれ!」

「はいはい裕也はこれな」

私にはそっと渡してくれたのに、柏木くんには少し雑にたこ焼きを渡す山宮くんが面白くて笑った。

「愛梨ちゃん、これ、美味しい…」

「奏葉たこ焼き好きだったんだね!ふふ、よかった奏葉が楽しそうで。山宮ともいい感じみたいだし」

「んん…そんなこと山宮くんは考えてないと思うんだよね」

「そう?明らかに山宮意識してるでしょ」