「お、思ったより暗いんだね…」

「ふふ、怖い?」

「いやそういうことじゃ、なくて」

「大丈夫だよー、所詮文化祭の出し物なんだか…」

その時山宮くんの話す声を遮るように真横でガタッという物音がして、二人して声をあげてしまった。

「わぁ!」

「うわ!」

咄嗟に私は山宮くんの方に右手を伸ばしてしまい、その手は山宮くんの手のひらによって握られた。
山宮くんのその手の温もりで私は我に返ることができた。

「びっ…くりしたね、意外と」

「うん。俺も結構叫んじゃった」

暗くて顔は見えないけれど、すぐそばで聞きなれた笑い声がする。
それにつられて私も少し笑ったけれど、その後もすぐに目の前から血だらけの人が現れて二人して叫ぶことになった。

「ちょ…思ってるよりじゃん」

「長いしすごいね、クオリティが」

「いや怖いとかじゃないんだけど、びっくりするじゃんいきなり音したら!」

ずっと怖がっていることを認めない山宮くんが面白くて、私は思わずおちょくってしまう。

「そんなこと言って、さっきから私の手めちゃくちゃ握ってるじゃん」

「これは白石さんから手出してきたでしょ⁈」

「へへ、そうだっけ?」

「白石さんそれはずるいわ…」

くだらない会話をして、また二人して叫んで。
そんなことを繰り返していたらいつの間にかいつもの距離に戻っていることに気がついた。
お互いの顔が見えていないからこそ、気まずさが吹っ飛んでいつものように話すことができた。

「やっとゴールだ…」

「山宮くんめちゃくちゃ疲れてるじゃん」

「うん、叫び疲れた…」

外に出て明るい世界に戻ると、愛梨ちゃん達が目の前で待っていた。
お待たせ、と話しかけようとすると、四人の顔がにやけていることに気がつく。
みんなしてどうしたんだろうと思っていたら、山宮くんが焦ったように私の手を離した。
一瞬の出来事で意味が分からなかったけど、山宮くんの照れた顔を見て私もすぐに察して顔を赤くした。

「へぇー…?」

「あの、これは違くてね、みんな」

「奏葉、ね?今もチャンスでしょ?」

「ちょっと愛梨ちゃん!ほんとにそういうつもりじゃないって!」

みんなは納得したかのようににやけた顔のまま私達に近づいてきた。
愛梨ちゃんには謎に応援してるぞと言わんばかりに肩まで叩かれて、完全に勘違いされているのだろう。