「あれ、愛梨達は何時から別行動するんだっけ?」

「うーんバルーンリリースの時間のちょっと前くらいかな。それまではみんなで回りたい!」

うちの高校の文化祭で一番盛り上がるのはフィナーレのバルーンリリース。
みんなで風船を膨らませ、カウントダウンをして一気に空に飛ばす。
その光景がとても綺麗で、うちの高校のジンクスでカップルで一つの風船を一緒に飛ばすと二人の幸せが長く続くなんていうものもある。

「結局誘えたの?山宮のこと」

「誘えたけど…まさかバルーンリリースの時間に二人っきりになるとは思わなくて」

「愛梨達から聞いてなかったの?まぁでもチャンスじゃん!」

蘭ちゃんと凪咲ちゃんが近くにいる山宮くんに聞こえないように小声で言う。
しかしまだみんなには山宮くんに告白したことは話していない。
もうチャンスも何もないのに、一緒にバルーンリリースの時間を過ごすことを山宮くんはどう思っているのだろう。

「いや、実はもうチャンスでも何でもないんだよね」

「それどういうこと?」

「…告白、しちゃったから」

「はぁ⁈山宮に告白したの⁈」

蘭ちゃんが大声でそう言った途端後ろで歩いていた山宮がせき込み出し、その横の柏木くんも驚きの声をあげた。

「は⁈告白⁈誰が誰に⁈」

「裕也うるさい」

「いやお前、そんな大事なことなんで!」

「言うわけないだろ馬鹿か」

「待ってほんとにごめん、めっちゃ大声出しちゃった」

「どの道みんな知ることになってただろうから大丈夫だよ…」

本人がいる前でみんなに知られてしまうことになるとは思わなかったけど、話しは早い。
そしてきっと、山宮くんの方が気まずいだろう。

「えっと、ごめん聞いていいのか分からないけど返事は…?」

「いや、その」

「返事はしなくていいって私が言ったの」

「何それ⁈奏葉それでいいの⁈」

「奏葉がよくても私らがよくない。おい山宮」

「俺に言われても…」

荒ぶる愛梨ちゃんと蘭ちゃんをなだめ、理由を説明する。

「本当に私の自己満足なの。返事なんておこがましくてもらえないし、気持ち押し付けたのはこっちだもん。だから何も言わないでって私の我儘を山宮くんが聞いてくれたの」

「まぁ…奏葉が納得してるならいいんだけど…」

「私達が首突っ込むことじゃなかったね!ごめん!せっかくの文化祭なんだから二人とも気まずくならずに楽しもう!」