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あの時のことは今でも鮮明に覚えている。
あの日は朝から所属しているチームの試合があった。
ここで勝てば県大会出場という大事な場面。
俺が所属していたチームは地区の中でも強く、自分はそこの十番を背負っていた。
昔からサッカーは好きだった。
小学一年生の時友達と一緒に始めたことがきっかけになり、どんどんサッカーにのめり込んだ。
けれど小学校五年生で今のチームに入った頃から少しづつサッカーへの思いが変わり始めた。
以前は純粋に点を決められたら嬉しいかったし、負けたら悔しい。もっと練習しよう、上手くなろうと思う。
その繰り返しが楽しくて続けていただけだった。
けれどそのチームに入ってから、勝ちたい、が勝たなくてはいけないに変わった。
最初は地区の中でも強いチームに入れたことが嬉しかったし、十番という背番号が誇らしかった。
けれどいつの間にかそれが俺の中で重圧に変わっていった。
コーチや親から次も、次もと言われる度、苦しくなった。
いつの間にかサッカーが楽しくなくなってしまった。
けれど辞めるなんて言ったら周りからどう言われるか。
自分でももったいなくて辞めるなんて考えたくなかったし、その頃から自分の感情に蓋をするようになった。