「どうしよう…私だってバレたら絶対、抜け駆けしたって女の子達から咎められるよ」

「抜け駆けって、そんなにその女の子達って陰湿なの?」

「うん。去年柏木が一瞬彼女作った時もすごかったもん。ほぼ周りが別れさせたようなものだし」

二人の問題に全くの他人が介入して別れさせようとするなんて、相当なものだったのだろう。
その女の子達は、どうしてそんなことをするんだろう。
柏木くんが誰の物にもなってほしくないのだろうか。
ただの高校生なのに勝手にアイドルのような扱いをされている柏木くんが可哀そうになってきた。

「そのこと、柏木くんは知ってるの?」

「知ってるわけないよ!こんなの女子の中で陰湿に詰められるものだし、特定されるのも時間の問題。あー、柏木と付き合えるようになったらなったで面倒くさいの完全に忘れてた…」

愛梨ちゃんはそう言って自分の机に項垂れてしまった。
柏木くんが何も知らないということは学校などみんなの視線があるところでそういう話をされてしまう可能性があるということか。
そんな子達のために二人が分かれるだなんて有り得ないし、どうにか阻止しなければならない。

「その女の子達は具体的にどんなことで別れさせようとしてくるの?」

「私も詳しくは知らないんだよね…だから余計に怖いというか。まぁそんなやつらに言われたって別れないけど!」

「なんか、漫画みたいだね」

「そんなこと言ってないでよー…結構重大事件なんだって。今日から学校も始まるし、柏木がどんな態度でくるか全く予想つかないし」

恋愛は付き合ったらゴールなのだろうと勝手に思っていたけれど、付き合ってからも大変なことがあるのだと初めて知った。
どうにか二人が平和に仲良く付き合うことができたらいいのだけれど。
二学期の初めから少しブルーになっている愛梨ちゃんの頭を撫でていると、後ろから聞きなれた騒がしい声が聞こえてくる。
愛梨ちゃんもその声に気がついたようで、項垂れて机に突っ伏していた頭をあげた。