夏休み明け一番の朝。
まだ暑さが残る中、私は愛梨ちゃんからとても嬉しい話を聞いた。
「えっ⁈付き合ったの⁈」
「ごめん言えなくて!ほんとは花火大会の日に告白して付き合うことになったんだけどなんか言えなくて」
「そんなのどっちでもいいよ…!おめでとう!」
珍しく朝早く教室に着いていた愛梨ちゃんの後ろ姿は何となく固かった。
何かあったのだろうかと心配して声をかけると、柏木くんと付き合うことになったことを伝えられた。
私は嬉しくなって、思わず愛梨ちゃんの手を掴んで立ち上がった。
「奏葉がそんなに喜んでるの初めて見た」
「嬉しいもん!応援してたし、上手くいってほんとによかった!」
「まあ確かに…」
せっかく柏木君と付き合えることになったというのに、愛梨ちゃんの顔色が曇っている。
どうしたの、と一言問うと、付き合い始めたことが学校の女の子達に広まっているのだという。
最初はそれの何が関係があるのか分からなかったが、少しして思い出した。
柏木くんはサッカー部のエースで、もちろん学校の女の子からも人気だ。
そんな柏木くんに彼女ができたと知ったら女の子達は騒ぎ出すに違いない。
しかもそれが愛梨ちゃんだとはまだ知らないらしく、むやみやたらに柏木くんの彼女に対して陰口を言い出したそうだ。