「山宮くんは、何が好き⁈」
「えっ?」
「うーん、食べ物とか、趣味とか?知りたいなって…」
さっきまで黙っていた私が急に活発に話し始めたのが面白かったのか、山宮くんは少し笑って何だろうなと言った。
困らせてしまっただろうか、と一瞬思ったが、思いのほかすんなりと自分のことを話してくれた。
好きな食べ物はチョコレートパフェで意外と甘党なこととか、逆に苦手なものは辛い物だとか。
中学の途中まではサッカーをやっていたことや、家族の話。
「へぇ、じゃあサッカー上手かったんだね」
「言って回るほどじゃないよ。いたチームのやつらも俺を過大評価してただけ」
「そんなことないよ。きっとほんとに上手かったんだよ。そうじゃないと人から期待なんてされないんだから」
「そうかなぁ」
山宮くんはそう言って少し寂しそうな目をしていた。
話を聞く限り、山宮くんはかなりチームのエースだったのだろう。
サッカーが好きなことがすごく伝わってきたし、だからこそそれ以上踏み込むことはできなかった。
「あ、わたあめだ!俺昔好きだったんだよなー」
「食べる?」
「いいの?」
「一緒に分けよう!」
山宮くんは昔から大のわたあめ好きだということが発覚し、まず最初に食べたのはわたあめ。
その後食べたのもチョコバナナ、りんごあめ、と甘い物ばかりで本当に生粋の甘党のようだ。
山宮くん自身も目が大きくて可愛い顔をしているので、甘い物が良く似合う。
「ん?何?」
りんごあめを一生懸命頬張る山宮くんが可愛くてずっと見つめていると不思議そうな顔でこちらを見られた。
「ううん。本当に好きなんだなって」
「あんまいないよね。男で甘党とか」
「確かに珍しいのかな?けど私は好きだから一緒に食べられるの、嬉しい」
「…なら、いっか」
今日の私はいつもの私ではないとさっき山宮くんに言われたけれど、それはこっちのセリフでもある。
今日の山宮くんは何だかいつもより挙動不審というか、普段山宮くんがすごく人の目を見て話すから私の方が目を逸らしてしまうのが嘘のように、あまり目が合わない。
「ん、あと三十分で花火始まるって」
「じゃあ移動しないとだね。愛梨ちゃん達が河原に場所取ってくれてて、もうそこにいるって」
食べながら話していると時間はあっという間に過ぎてしまい、いつの間にか花火の時間が迫っていた。
花火はみんなと見る約束をしているので、山宮くんと二人きりの時間はここで終わり。
きっと寂しいなんて思っているのは、私だけ。